2026年6月8日

「AIを試したけど使えなかった」中小企業がつまずく5つの理由(生成物の直し方も)

AI活用
「AIを試したけど使えなかった」中小企業がつまずく5つの理由(生成物の直し方も)

「AIを試したけど使えなかった」と感じる原因の多くは、AIの性能ではなく使い方の小さなズレです。中小企業でつまずきが起きる場面は、(1)丸投げしている (2)一発で完成させようとする (3)直したい一か所だけを直せない (4)自社の事情を渡していない (5)AIが苦手な作業に使っている、の5つにほぼ集約できます。

この記事では、5つのつまずきの見分け方と、生成物を思いどおりに直す「修正の型」、迷ったときの確認フローを、専門用語をかみ砕いてご紹介します。

なぜ「AIを試したけど使えなかった」が起きるのか?

AIが使えないと感じるとき、たいていは「AIの能力が足りない」のではなく「指示や使う場面がかみ合っていない」だけです。逆に言えば、つまずきの型さえ分かれば、ほとんどはその場で直せます。

中小企業の現場でよく見かける5つのつまずきを、症状と直し方で整理しました。

AIが使えないと感じる5つの理由:丸投げ・一発で完成させようとする・ピンポイント修正ができない・自社の事情を渡していない・苦手な作業に使っている
「AIが使えない」と感じる5つの理由(中心の悩みから放射状に整理)
つまずきの理由よくある症状直し方のひとこと
1. 丸投げしている指示が短く、毎回ピント外れの答えが返る「誰に・何のため・条件」を3つ足す
2. 一発で完成させようとする1回でダメだと「使えない」と諦める返答に注文をつけて2〜3回育てる
3. ピンポイントで直せない一か所直したいのに全部書き換わる「ここだけ直して、他はそのまま」と範囲を指定
4. 自社の事情を渡していない文章はきれいだが中身が一般論過去の文章や社内の前提を見本として渡す
5. 苦手な作業に使っている数字や事実が平気で間違う正確さが命の作業は人が確認、または別の方法に

理由1:AIに「丸投げ」していて、前提が伝わっていない

AIは、あなたの会社の事情も、相手が誰かも知りません。前提を渡さずに頼むと、当たり障りのない一般論しか返ってきません。

たとえば「お詫びメールを書いて」だけでは、誰あてで何のお詫びか分からないので、どこにでもある定型文が出てきます。

そのままだとピント外れ「お客様へのお詫びメール書いて」
前提を足すと一気に使える「長くお付き合いのある取引先あてに、納品が3日遅れることへのお詫びメールを作って。誠実に、でも重すぎず。300字くらいで」

渡すと精度が上がる前提は、おもに次の3つです。指示の冒頭に足すだけで、返ってくる質が変わります。

  • 相手:誰に向けた文章か(取引先、社内、初めての見込み客 など)
  • 目的:何のための文章か(お詫び、案内、依頼 など)
  • 条件:長さ、トーン、形式(300字、やわらかく、箇条書きで など)

理由2:一発で完成させようとして、対話で「育てて」いない

AIは、1回目の答えがゴールではありません。返ってきた文章に注文をつけて、2〜3回やり取りするほど、だんだん思いどおりに近づきます。

1回でダメだったから使えない、と判断してしまうのが、いちばんもったいないつまずきです。

「ここをもっと短く」「この言い回しは固いので、やわらかく」「箇条書きにして」のように、会話で近づけていくのが、本来の使い方です。

コツは、ダメ出しを具体的な注文に変えることです。「なんか違う」ではなく「2文目が固いので、やわらかく言い換えて」と伝えると、AIは正確に直せます。

理由3:直したいのは一か所なのに、全部書き換わってしまう

「使えない」と感じる場面で特に多いのが、これです。一か所だけ直したいのに、AIが全体を別物に書き換えてしまい、気に入っていた部分まで消えてしまいます。

原因は、指示が「全体を良くして」になっていることです。AIは言われた範囲を素直に直すので、範囲を区切らないと、全部が対象になります。

全部書き換わる言い方「さっきの文章、もうちょっと良くして」
一か所だけ直す言い方「3つ目の段落だけ、もう少しやわらかい言い回しに直して。ほかの段落はそのまま変えないで」

「ここだけ直して、ほかはそのまま」と一言そえるだけで、せっかくの良い部分を守りながら直せます。これが、後半でご紹介する「修正の型」の中心になります。

ご相談の現場でも、「ピンポイントで直せないのが一番のストレス」という声をよくいただきます。お話を伺うと、多くは「全体を直して」と頼んでいて、範囲を区切っていませんでした。範囲を指定する習慣をつけるだけで、やり直しの回数がぐっと減ります。

理由4:自社の事情を渡していないので、一般論しか返ってこない

文章はきれいなのに、中身が当たり障りない、と感じることがあります。これは、自社の具体が入っていないからです。

過去に書いた似た文章、社内でよく使う言い回し、自社の強みやサービスの中身を「見本」として渡すと、返ってくる文章がぐっと自社らしくなります。

「この文章の調子に合わせて書いて」と過去の案内文を貼るだけでも、トーンがそろいます。

見本を渡すときは、入れていい情報・ダメな情報の線引きを先に決めておくと安心です。お客様の個人情報や社外秘は、そのまま貼らない、または固有名詞を伏せてから使います。判断のしかたはAIに入れていい情報・ダメな情報の線引きでフロー付きにご紹介しています。

理由5:AIが苦手な作業に、AIを使っている

AIにも不得意があります。正確な数値計算、最新の事実確認、社外秘をそのまま扱う作業は、もともと苦手です。

特に、もっともらしい顔で事実を間違えること(ハルシネーションと呼ばれます)があります。AIは「それらしい文章」を作るのが得意な一方で、内容が正しいかどうかの保証はしてくれません。

次のような作業は、AIに任せきりにせず、人が最終確認するか、別の方法と組み合わせてください。

  • 金額・日付・数量など、間違うと困る数字の計算
  • 「最新の制度」「今の価格」など、新しい事実の確認
  • お客様の個人情報や社外秘を、そのまま扱う作業

逆に、文章のたたき台づくり、要約、言い換え、アイデア出しのように「下書きを早く作る」作業は、AIの得意分野です。向いている作業に使うだけで、「使えない」という印象は大きく変わります。

生成物の直し方:修正は「3つの型」で言えば伝わる

直し方さえ分かれば、AIはとても素直な相棒になります。修正の言い方は、次の3つの型に当てはめれば、たいてい伝わります。

修正の型言い方の例使う場面
1. 範囲を区切る「3つ目の段落だけ」「タイトルはそのまま、本文だけ」一部だけ直したいとき
2. 方向を言葉で示す「もっと短く」「やわらかく」「専門用語を減らして」雰囲気や長さを変えたいとき
3. 見本を見せる「この文章の調子に合わせて」と過去の文を貼る自社らしさを出したいとき

3つの型は組み合わせられます。「2つ目の段落だけ(範囲)、もっと短く(方向)直して」のように言うと、狙ったところだけが、狙った向きに変わります。

伝わりにくい「なんか堅いから直して」
型に当てはめると伝わる「最後の段落だけ(範囲)、お客様に話しかけるような、やわらかい調子に(方向)直して。ほかはそのまま」

「使えない」と感じたときの、確認フロー

うまくいかないとき、どこから見直せばいいか迷ったら、上から順に確認してみてください。多くは、最初の数ステップで解決します。

1
「相手・目的・条件」の前提を伝えましたか?
×「いいえ」なら前提を3つ足して、もう一度出してもらう(理由1)。
「はい」なら次へ
2
直したいのは、文章の一部だけですか?
「はい(一部だけ)」ならその箇所を指定して「ここだけ直して、他はそのまま」と頼む(理由3)。
「いいえ(全体が物足りない)」なら次へ
3
返ってきた内容が、一般論すぎますか?
「はい」なら過去の文章や社内の前提を見本として渡す(理由4)。
「いいえ」なら次へ
×
ここまでで解決しないなら、その作業自体がAIに不向きかもしれません。正確な数字・最新の事実・社外秘は、人が確認するか別の方法に切り替えます(理由5)。

もし全部書き換わって、前の文章に戻せなくなったら

慌てなくて大丈夫です。AIとのやり取りは、チャットの履歴にすべて残っています。

画面を上にスクロールすれば、前のバージョンの文章がそのまま残っているので、必要な部分をコピーして戻せます。あるいは「1つ前の文章に戻して」と頼んでも構いません。

大事な下書きは、AIに直してもらう前に、いったんメモ帳や別のファイルに貼っておくと安心です。これだけで「気に入っていた版が消えた」という事故をほぼ防げます。

業種別、こんな直し方が効きます

つまずきの型は共通でも、効く場面は業種で少しずつ違います。お困りごとに近い活用事例もあわせてご覧ください。

  • 製造・板金:見積メールや作業手順の下書きは、過去の文面を見本として渡すと自社の言い回しになじみます(製造・板金の活用事例)。
  • 士業・管理部門:契約文や案内文は、範囲を区切って直すと、定型の言い回しを崩さずに微調整できます(士業・管理部門の活用事例)。
  • 教育:お便りや募集文は、対象(保護者・生徒)と目的を前提に渡すと、トーンが合います(教育の活用事例)。
  • 薬局・医療:説明文は、数字や事実を人が必ず確認する前提で、たたき台づくりに使うと安全です(薬局・医療の活用事例)。

AIの答えは、そのまま信じて大丈夫?

AIの出力には、誤りが含まれることがあります。これは使い方が悪いのではなく、生成AIの性質によるものです。

偽情報や誤った情報が生成されうることは、AI事業者ガイドライン(総務省・経済産業省)でも社会的なリスクとして整理されています。だからこそ、出てきた答えは「下書き」として受け取り、事実と数字は人が確認する、という使い方が安全です。

よくある質問

無料版でも、ここまで直せますか?

はい。今回ご紹介した「前提を足す」「範囲を区切って直す」「見本を渡す」は、無料版でも同じように使えます。まずは無料版で、いちばん時間のかかる文章仕事を1つ任せてみてください。

どのAIを選べばいいか、まだ迷っています。

用途とふだん使っているツールで選ぶと迷いません。3つの違いと選び方はChatGPT・Claude・Gemini、中小企業はどれを使うべき?で早見表つきにご紹介しています。

費用はどのくらいかかりますか?

無料で試せて、本格的に使う段階で1人あたり月20ドル前後が目安です。全体像は中小企業のAI導入、結局いくらかかる?でご紹介しています。

無理なく直せるようになる3ステップ

  • STEP1 無料版で、いちばん時間のかかる文章仕事を1つ任せる
  • STEP2 返ってきた答えに「範囲を区切って」注文をつけ、2〜3回育てる
  • STEP3 社内に広げたい・うまくいかない作業を整理したくなったら、個別相談(初回60分・無料)へ

個別相談(初回60分・無料)に申し込む

関連記事:ChatGPT・Claude・Gemini、中小企業はどれを使うべき?AIに入れていい情報・ダメな情報の線引き中小企業のAI導入、結局いくらかかる?

タグ

#AI活用#ChatGPT#生成AI#プロンプト#中小企業

この記事を書いた人

志水 康太(しみず こうた)

合同会社ICHI. 代表 / AIコンサルタント

【経歴・専門性】
  • 専門分野:ChatGPT、Claude等の生成AI活用、業務効率化支援
  • 医療分野:医療・リハビリテーション分野での現場課題解決
  • 教育実績:4,000名規模のセミナー集客・スクール運営実績
  • AI活用歴:AIセミナー歴3年以上、延べ500名以上が参加
【実績・活動内容】
  • AIセミナー登壇:30回以上
  • 中小企業向け研修:30回以上実施
  • AIコミュニティ運営:在籍150名以上
  • 医療セミナー:累計受講者10,000名以上
  • 肩関節機能研究会:オンラインスクール運営(在籍者500名以上)
  • 三河AI学校:運営準備中(子どもから大人まで学べるAI教育)

「1企業に1人、AI人材を」という理念のもと、導入から定着まで経営者と伴走しています。医療分野での豊富な経験と教育・研修運営の実績を活かし、理論だけでなく現場での実践経験に基づいた具体的で実行可能なAI活用方法をお伝えします。

「AIを試したけど使えなかった」中小企業がつまずく5つの理由(生成物の直し方も) | ICHI.