2026年5月29日

中小企業がAIに入れていい情報・ダメな情報の線引き|実例ガイド

AI活用
中小企業がAIに入れていい情報・ダメな情報の線引き|実例ガイド

結論からお伝えします。会社の機密情報や個人情報そのものをAIに入力するのは避けてください。ただし「何を入れてよくて、何がダメか」の線引きを決めて社内ルールにすれば、中小企業でもAIは安全に活用できます。

この記事では、入れていい情報・ダメな情報の早見表具体的な書き換え例、社員にそのまま配れる「AI利用ルール」のひな型、そして「もし入れてしまったら」の対処までご紹介します。

「ChatGPTに会社の資料を読ませてみたいけれど、情報が漏れないか心配で踏み出せない」。東三河の経営者の方から、もっとも多くいただくご相談のひとつです。

豊橋・豊川の製造業や調剤薬局、税理士事務所など、業種を問わず「AIに入れていい情報の線引きが分からない」という声を繰り返し聞いてきました。

ご相談の現場では、ある製造業の二代目経営者がこんな悩みを口にされていました。

ご相談事例(製造業・東三河)

「今は社員に『社内の情報は入れないでね』と言うくらいしか対策ができていません。でも、社員から『どこまでならやっていいですか』と聞かれたときに、ちゃんと答えられる基準を用意しておかないと、と感じています。」

この「基準を用意できていない」状態こそが、多くの中小企業がAI活用の一歩目で止まってしまう原因です。順番に解いていきましょう。

そもそもAIに情報を入れると、何が起きるのか

線引きを考える前に、AIに情報を入力すると何が起きるのかを整理します。心配のポイントは大きく3つです。

1. 入力した内容が「学習」に使われる場合がある

無料で使えるAIサービスの中には、利用者が入力した内容をAIの改善(学習)に使うものがあります。学習に使われると、入力した情報が将来ほかの人への回答に影響する可能性が、理屈の上では残ります。

2. データは海外のサーバーで処理されることが多い

多くの生成AIは、海外のサーバーで情報を処理します。「サーバーが海外にあるのが不安」という声はよくいただきますが、これは適切な設定とルールで管理できる範囲のリスクです。

3. ツールごとに利用規約が違う

「入力データを学習に使うかどうか」は、ツールやプランによって扱いが異なります。とくに無料の便利ツールには、規約に扱いがはっきり書かれていないものもあります。

AIに入れていい情報・ダメな情報の早見表

判断はシンプルに、「外に出たら困る情報かどうか」で考えます。まずは早見表で全体像をつかんでください。

判定情報の種類どうする
すでに公開している情報(自社サイトの文章・パンフレット・プレスリリース)そのまま使えます
固有名詞を含まない一般的な相談(見積書のたたき台づくりなど)そのまま使えます
自分の頭の整理・アイデア出し・文章の言い換えどんどん使えます
取引先の社名が入った相談文「A社」など仮名に置き換える
具体的な金額が入った相談「100万円」など仮の数字に置き換える
参加者名入りの会議メモ・議事録名前を伏せる/許可されたツールで処理する
×お客様・患者さんの個人情報(氏名・連絡先・病歴など)入力しない
×契約金額・取引条件・財務・未公開の経営情報入力しない
×従業員の個人情報・人事評価・給与/パスワード入力しない

迷ったときは、この順番で考える

グレーな情報に出会ったら、次のフローで判断してください。

その情報が外部に出たら、お客様や取引先に迷惑がかかる?
いいえ ↓ / はい → 個人を特定できる情報を含む?
個人を特定できる情報(氏名・連絡先など)を含む?
はい ↓
× 入れない。その情報は使わず、一般化した相談にする。
いいえ ↓ 固有名詞や数字を仮のものに置き換えられる?
置き換えられるなら、匿名化して使えばOK。
そもそも社外秘でも個人情報でもない ↓
そのまま使ってOK。

迷ったときは、その場で判定できます

入れようとしている情報が「入れてOKか・匿名化すればOKか・入れないべきか」を、無料ツールでその場で確認できます。AI入力 安全度チェッカーを使う

NGをOKに変える「書き換え」の具体例

グレーな情報の多くは、少し書き換えるだけで安全に使えます。実際の書き換え方を見てみましょう。

そのままだとNG「豊橋の山田製作所向けの、500万円の設備見積もりの提案文を作って」
こう書き換えればOK「ある製造業の取引先向けに、数百万円規模の設備見積もりの提案文を作って」
そのままだとNG「患者の佐藤花子さん(高血圧)への服薬指導の説明文を作って」
こう書き換えればOK「高血圧の患者さん向けの、一般的な服薬指導の説明文を作って」

ポイントは、固有名詞と特定につながる数字を、仮のものや一般的な表現に置き換えること。これだけで、使える場面が一気に増えます。

あなたの業種では、特にここに注意

  • 製造業:図面・原価・取引条件は社外秘。一般的な書類づくりから始めるのが安全です(製造業のAI活用事例)。
  • 調剤薬局:患者名・薬歴・処方内容は個人情報。患者を特定しない形に直して使います(調剤薬局のAI活用事例)。
  • 税理士事務所:顧問先名・決算書・申告内容は守秘義務の対象。固有名詞を外して相談します(税理士事務所のAI活用事例)。

「セキュリティが心配」なのに、実は危ない落とし穴

ここで、現場でよく見かける逆転現象をお伝えします。

有名なAIは警戒するのに、無料の便利ツールには無防備になりがち、という対比のイメージ
気をつけるべきは「有名かどうか」ではなく「規約にどう書いてあるか」

現場での気づき

「AIは情報漏えいが怖い」と慎重な会社ほど、実は無料の会議議事録ツールに、社員や取引先の名前が入った会話をそのまま録音・文字起こしさせている、というケースが少なくありません。

つまり、有名なChatGPTやClaudeは警戒するのに、情報の扱いが規約に明示されていない無料の便利ツールは無防備に使っている、という状態です。

本当に気をつけるべきは「名前が知られているAIかどうか」ではありません。「そのツールが、入力した情報をどう扱うと規約に書いてあるか」です。ここを確認する習慣が、いちばんの守りになります。

学習をオフにする設定で、もっと安全に使う

多くのAIには、入力内容を学習に使わせない設定や、業務向けのプランがあります。主要な3つを比べると、方向性は共通です。

ツール入力内容の学習業務利用の選び方
ChatGPT設定でオフにできる業務なら法人向けプランが安心
Claude入力を学習に使わない方針が示されている相談相手として使いやすい
Gemini業務向けプランで学習に使わない形にできる既存のGoogle環境と相性が良い

「学習をオフにしても、本当に使われていないか不安」という声もいただきます。完全にゼロリスクを求めるなら、そもそも機密情報を入れないのが一番の対策です。設定は二重の安全網と考えてください。なお、各ツールの設定やプランの内容は変わることがあるため、利用を始める前に最新の利用規約をご確認ください。

社員にどう使わせる?コピーして使える「AI利用ルール」

最後に、社員にそのまま配れる最小限のルールのひな型をご用意しました。これをたたき台に、自社向けに調整してお使いください。

【自社用】生成AI利用ルール(ひな型)

  1. お客様・取引先・従業員の個人情報は入力しない。
  2. 契約金額・財務・未公開の経営情報など、社外秘は入力しない。
  3. 固有名詞や数字は、仮のもの(A社・100万円など)に置き換えてから使う。
  4. 会社が許可したAIツール・プランだけを使う。
  5. 迷ったら入力せず、責任者に確認する。

このルールをワンクリックでコピーする / A4 PDFでダウンロード(社内掲示・配布用)

大切なのは、「禁止」だけで終わらせないことです。「ここまでは安全に使っていい」という許可の範囲をセットで示すと、社員は安心して活用を始められます。

「禁止と言うべきか、設定で防ぐべきか、どちらが正解か」と悩む経営者の方が多いのですが、答えは両方です。ルールで線引きを示し、設定で技術的にも守る。この二段構えが、もっとも現実的で安全な進め方です。

もし機密情報を入れてしまったら

「うっかり入れてしまった」ときも、あわてず順番に対処すれば大丈夫です。

  1. その会話(チャット)を削除する。
  2. 設定で「入力内容を学習に使わない」状態になっているか確認する。
  3. 履歴の保存設定を見直す(必要なら履歴をオフにする)。
  4. 社外秘や個人情報だった場合は、社内の責任者に共有し、再発防止のルールを確認する。

一度の入力ですぐに大きな問題になることは多くありませんが、早めの対処が安心につながります。「失敗したら終わり」ではなく、「気づいて直せば大丈夫」と考えてください。

よくある質問

AIは精度100%ではないと聞きます。使って大丈夫ですか。

AIの回答は完璧ではありません。ですが、たたき台を8割の精度で一気に作り、残りの2割を人が直す、という使い方なら十分に実用的です。最終確認を人がする前提であれば、精度は障害になりません。

海外のサーバーで処理されるのは危険ではないですか。

海外で処理されること自体が、ただちに危険というわけではありません。重要なのは「何を入力するか」と「学習に使われない設定にしているか」です。機密情報を入れず、設定を整えれば、過度に恐れる必要はありません。

国の機関は、生成AIの利用について何か示していますか。

はい。個人情報保護委員会は生成AIサービスの利用に関する注意喚起を公表し、個人情報を安易に入力しないよう促しています。IPA(情報処理推進機構)もテキスト生成AIの導入・運用ガイドラインで、機密情報の入力を避けることや利用ルールの策定をすすめています。この記事の考え方とも一致しています。

まとめ:線引きを決めれば、AIは中小企業の強い味方になる

AIの情報管理は、「怖いから使わない」でも「気にせず使う」でもなく、その間にある、線引きを決めて使うが正解です。

入れてはいけない情報を避け、迷ったら匿名化し、社内ルールと設定の二段構えで守る。この基本さえ押さえれば、東三河の中小企業でも、今日から安全にAIを活用できます。

無理なく始める3ステップ

いきなり相談しなくて大丈夫です。次の順で、できるところから始めてください。

「うちの業種だと、どこまで入れていいのか」を具体的に整理したい方へ。東三河を中心に、対面・オンラインのどちらにも対応しています。無理に契約をおすすめすることはありません。

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業種別に「どの業務でAIを使えるか」をまとめた活用事例もご用意しています。あわせてご覧ください。

タグ

#AI活用#情報セキュリティ#中小企業#ChatGPT#東三河

この記事を書いた人

志水 康太(しみず こうた)

合同会社ICHI. 代表 / AIコンサルタント

【経歴・専門性】
  • 専門分野:ChatGPT、Claude等の生成AI活用、業務効率化支援
  • 医療分野:医療・リハビリテーション分野での現場課題解決
  • 教育実績:4,000名規模のセミナー集客・スクール運営実績
  • AI活用歴:AIセミナー歴3年以上、延べ500名以上が参加
【実績・活動内容】
  • AIセミナー登壇:30回以上
  • 中小企業向け研修:30回以上実施
  • AIコミュニティ運営:在籍150名以上
  • 医療セミナー:累計受講者10,000名以上
  • 肩関節機能研究会:オンラインスクール運営(在籍者500名以上)
  • 三河AI学校:運営準備中(子どもから大人まで学べるAI教育)

「1企業に1人、AI人材を」という理念のもと、導入から定着まで経営者と伴走しています。医療分野での豊富な経験と教育・研修運営の実績を活かし、理論だけでなく現場での実践経験に基づいた具体的で実行可能なAI活用方法をお伝えします。

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